昨日は朝5時前から起きていて、朝から酒を飲んでいたので早くも夜の9時過ぎに寝床に倒れ、僕は眠りに入ったのだった。
そしてパソコンで「マイ・プライベート・アイダホ」を録画していたので録画終了ボタンを押す為にアラームを23時過ぎにセットし、目が醒めた。
僕は二度寝をしようとしたができんかった。
なので先日に買った中原中也訳のランボオ詩集を手に取り、毛布に包まれながら読み始めたのだった。




雌鳩らは、静かに飛んで、我が寝そべつてゐる
芝生の方までやつて来て、私のまはりに羽搏(はばた)いて
私の頭かうべを取囲み、我が双の手を
草花の鎖で以て縛いましめた。
薫り佳き桃金嬢もて飾り付け、さて軽々かろがろと私を空に連れ去つた
彼女らは雲々の間あひだを抜けて、薔薇の葉に
仮睡まどろみゐたりし私を運び、風神は、
そが息吹いぶきもてゆるやかに、我がささやかな寝台とこをあやした。

鳩ら生れの棲家に到るや
即ち迅き飛翔もて、高山たかやまに懸かるそが宮殿に入るとみるや、
彼女ら私を打棄てて、目覚めた私を置きざりにした。
おお、小鳥らのやさしい塒ねぐら!……目を射る光は
我が肩のめぐりにひろごり、我が総身はそが聖い光で以て纏はれた。
その光といふのは、影をまじへ、我らが瞳を曇らする
そのやうな光とは凡おほよそ異ちがひ、
その清冽な原質は此の世のものではなかつたのだ。
天界の、それがなにかはしらないが或る神明しんめいが、
私の胸に充ちて来て大浪のやうにただようた。




読み始めてすぐに、僕は感動に包まれ、全身を、光と愛に満たされたそのとき、除夜の鐘の音が遠くで鳴り響いた。
おお、天の父と聖霊たちはこの宇宙で最も愚かなわたくしに最も素晴らしい年越しを与え賜われたのか…!
感涙し、神からの愛の深さに打ちのめされたるあと、僕の今求める詩がそのあとあまりなく、退屈を覚えながらページを捲りまくり、飛ばしまくって読み、不満のなかに、本を閉じ、拗ねて口を尖らせてわたくしは寝くさった。

僕は夢のなかで、様々な体験をした。
だが目を覚ますと、僕は一つの断片をしか記憶していなかった。
夢のなかで、僕は兄と車で出掛ける予定だった。
僕は嬉しかった。
そんな経験は、今まで何度あったろうか。
あまり兄とわたしは二人で出掛けることはなかったのである。
わたしは欣びのなか、支度した。
兄は「先、車に行ってるわ。」と言って先に家を出た。
わたしは慌てて、急いで、準備した。
そして玄関に向かい、しゃがんで靴紐を結んでいた。
それが意味のわからない靴紐だった。
何をどうやってもうまく行かなかった。
想うように結べなかった。
僕はずっとずっと必死に、ちゃんと、ほどけないように紐を結ぶことに夢中になり、その間ずっと兄を独りで待たせていることに途方に暮れながら苦しんだ。
早く、早く、わたしは兄のところへ行きたかった。
そして車に乗って二人で一緒に出掛けたかった。
すると玄関のドアが開いて兄が戻ってきて、兄は怒りと悲しみのいつもの恐ろしい形相でわたしに言ったのだった。
「2時間も待っとったんやぞ。」
マジか…。まさか二時間も経っていたとは…わたしは想わなかった。
嗚呼、叶わなかった。
愛する兄と二人で出掛けることができなかったわたしは、悲しくて、兄にも申し訳がなかった。
二時間も、兄はマンションの下に止めている車のなかで独りで待っていた。
準備を整えたわたしが降りてくるのを。
兄はもしかするときっと天にいたときも、こんな感じだったのだろうかとわたしは目が醒めて想った。
わたしが降りて来るのを兄はずっと待っていた。
だがわたしが降りて行って母の子宮に受胎したのは兄が生まれてから五年もあとだった
わたしは自分の青写真を作るのに時間を掛け過ぎたのか。
本当はもっと早く、降りて行くことを兄と約束していたのかも知れない。
わたしは降りて行くのが遅れた為、わたしと兄は、ずっと離れて互いに独りで暮らしているのだろうか。
本当は共に、ずっと一緒に暮らす約束を、していたのに。