今まで俺が出してきたもの、その総てを、積み上げたなら、何れ程の規模の山が出来、何れ程の規模の川となるだろう?
そう、ふと、俺は想ったのだった。であった。
何の話やねんかと言うと、俺が話しているのはずばり自分のこれ迄の排泄物の話である。
排泄物を拝む宗教が、何処かにあるかと聴いたことはないか?
そうか、ないか。
俺も、ありません、全く。
でも、何処かにはあるかも知れへなんだやないですかぁっ。
ばぶんっ。
よし、そう来たら、もう行くで俺は。
絶対に見付けよう。それを。宇宙の果てまで旅しても。
俺は絶対に見付けるからな。止めてくれるな。女房、倅、俺の袖を、引っ張るなちゅてんのぉ。もぉ。伸びてしまうやかいさぁ。もぉ。ちょお放してぇやあ、うわあっ。
あろうことか、俺は袖を引っ張られたまま、旅に出掛けたので、水星の宿で一休みした時もまだ、俺の袖は地球と繋がっていた。
袖を引っ張られたままで、どうやって宿で茶を、飲んどるんばいか、と想われたでありましょう。
ははははは。見てごらん、ほおれ、この通りでござんす。あっちきはぁ、この袖っ、袖の中途の部分に、穴を五個ずつ、開けてやったんですわ。片手ずつね。ほいだらこれ見ってん、己れの袖、何れ程の距離、時間、真空空間を例え間に挟んで引っ張られていても、俺はこの服を着たまま、茶を啜ることができるではありゃせんかっ。
女房、倅、の未練を、断ち切るのなら?そらあなた、ばっすわーっと鋏で、切ってもうたら終いですわね。
でも俺は、それをしなかったんだね。何故って矢張、繋がったままの方が帰るとき便利かな想てね、まあ打算的とあとでしばかれて天涯孤独の身と、なることも覚悟の上のことですな。
奈良を三日間、糟に漬けて奈良漬、それどうやって喰うたらええのかな。ちう話と同じですよ。
えっ?そんな話、誰もしていない?
Kaba.俺には俺の、遣り方が在る。
団子喰いに来たわけやあらへんのですぜ。
この星に。ほな何しに来はったと訊ねた?いま訪ねたよね?
僕はね、ほな話しますわ。僕はねえ、すっごく、価値の高いことをしに、此処まで女房、倅の泪、振り切って、来たんだす。
嗚呼、想いだすと、鼻血が出そうなほど、殴られた。あの晩のこと...
どらあっ。放せ放せ放せぇっ。てやんでい。あっちきは行くったら行くんでい。俺のこれまで、生きてきたこの、人生の今、此のときまで、そう、now on timeまで、出してきた!奴達。彼らはすべてすべてすべて!きっと宇宙のどこかで俺を守護してくれている...必ず!何処かで今も、生きて、何かを想っているのだよ。嗚呼!!!彼らのことを想えば、胸がうどん粉状になりそうだ。さらさらになって、世界に砕け散りそうだ!止めてくれるねぃ、おっかさん、息子よ。俺を宇宙の果てまで、行かせてくだせえ。たった一人で、たった独りで俺は、俺の出してきたすべてを、この目で確かめたい。俺はそうせねば、芯の像が、爆死するよ。ほんとさ、彼らが、俺を呼んでいるんだぜ。手前らには聴こえないのか、彼らの声が。肥溜めから声がする?ちゃうわいいいいいぃっ。肥溜めから聴こえる声は、悪魔の声た。騙されるな!あやつらは自分が排泄物だと欺き、人の排泄物を待ち望んでいる畜生と餓鬼たちだよ。あやつらに乗り込まれたら、最早、生きては帰られぬ。
あやつらは俺らを、乗っ取ろうとしているのだよ。気を付けろ!
人々はそうして、排泄物と、死肉を喰らい続けている...
排泄物人間、死肉人間なのだよ。
何を言っても、聴く耳を持たない。
イエスが、『聴く耳を持つ者は聴きなさい。』と言われたときも、鼻糞ほじって食べていた人間達の子孫だよ。えっ?俺達の祖先もそうやったて?なこと、あるかあっ。ばっぶんっ。興奮してばっぶんっ躍りをしてもうたやないか。ア~アコレコレバッブンバッブンブンブンブンブンっ。ってなんか言うか止めるかしてくれへんのか、あんたら。こんなときは止めひんのに、なんで俺が自分の排泄物のすべてに会いに行くと言って宇宙の果てまでの旅に永久的に出るとゆうたら止めるのか。
もう、勝手にしてくれてあーあー、やっぱ無理っすわ、もう無理矢理にでも俺は行きまっさ。ほな、さいなら。
ちゅて、ね。まあなんとか、此処まで遣ってこれたんですわ。いやあー時間がねもう、説明できないかなこれ。時間の感覚がね、普通じゃなくって、意味がわからひんのよ、もう。空間がね、萎んでくるくるしてるんですよ。で、みつみつしてるんでふよ。密々。そわそわしていて、ぶんぶんしてるんですよ。俺がね。
肛門が口腔だった場合、口から排泄物を出さなくてはならないから、やっぱ嫌ですな。と、想っていました。
で、そうなるとね、どうなるかというと、いや間違えました。ははは。
肛門が口腔だったらでなくて、口腔が、肛門であったなら。です。
ややこしい話でほんま。ねえ、ほんま、考えたら体内が困惑してもうてキムチご飯喰いたくなりますわ。
口腔がね、あなた、肛門なんですよ。賞味。そうするとね、口から出すわけでしよ、うん、まずね、これ、臭いね(笑)これは耐え難いものがあるよね。でも大事な話なんです。口から出したら、普通ゲロだって扱われて、排泄物とはされないですよね。詰まり、そこに人類は区別してしまうんですわ。あっさりとね。本当に浅薄に、吐瀉物と、排泄物を、違う存在としてね、考えてしまうんですよね。
此処に実は、人類の成長と進化の停止があります。
または退化。
実はね、此処だけの話ですが、人類は実は元々は口腔が、肛門であったんです。
でね、ケツに、穴は在りませんでした。
詰まり、口腔が、肛門と同時に食物を摂り込む、摂取口だったんですね。
でね、腸、はらわたがね、食道と同じだった、一つだったんですよ。
だからかなりコンパクトな胴体だったんですね。
昔は人類は滅茶苦茶小さかったんですよ。
小人みたいでとても可愛らしかった。
それでね、彼らは木の実を食べて、木の実を胃の中で消化し、そして食道腸で糞尿を製造していました。
そして口腔からぽこんと、出していた。
丸い、蛇の卵状の見事な排泄物です。
彼らはそれを排泄する度に、それを神棚に置いて、祀っていたんですよ。
今日一日、無事に終えられますように。と祈っていた。
そうです。昔の人類は、自らの排泄物を、神として、崇めていたのです。
自分の、身体の外も中も、則ち、これ神の物。
その神の領域から出てきた、生まれ出でた物。
神の仕組みで創造された不思議な存在物。
これをね、どのようにして、ぞんざいに、扱えますか?
かつての人類は、神と共に生きていたのです。
処が神と、離れて生き出した頃から人間は自分の身体から出てきた神聖なものを汚物などと呼び、穢い、臭い、危険、などと忌み嫌うようになってしまった。
此処からね、実は人類はもんのすごい速度で退化し出したのです。
そして到頭、食物という神聖なものを摂り入れる場所と、この世に現出する神として愛してきた排泄物を産む場所を、分けてしまった。
これは人類が、その願いの、想像による創造によって、人間の身体の器官を変化させてしまったのです。
そうして人間は神が、見えなくなってしまった。
神の存在を、観ないよう(出て来ないよう)にと、便器も蓋をするようになってしまったのである。
そしてすべての、都合の悪いものには蓋を。の精神が蔓延り、この世は堕落の一途を辿り、生物の大量の排泄物は、行き場を無くし、この星を汚染しなくては生きて行けなくなってしまったのです。
汚染された身体から出るものは、また汚染されているのです。
俺は人類と、すべての生命を救うため、果てのない宇宙の旅に出た。
そう、俺は俺の、産み落としてきたすべてに、責任がある。
俺の産み落としてきた巨大な排泄物の山、俺の体内から流れた巨大な川を、俺は何より崇拝していたことを、やっと想い出したのである。
本来、何より綺麗であるものを、人間が産み落とすと、糞となるのでふ。
なんという悲しい世界であろう。
どうにか、綺麗なものを、綺麗なままで産み落とす時に、戻ろうではないか。
そう言って、俺は前方を情熱的な眼差しで見つめ、全速力で厠へ向って駆け付けた。